冬至の夜、長良川に浮かぶ「一年」
一年でいちばん夜が長い、冬至の日。鵜飼で有名な岐阜・長良川に、1から12の数字とその年の干支をかたどった巨大な行灯が浮かびます。
「清流の国」とも呼ばれる岐阜では、古くから川文化に育まれた工芸・産業が栄えてきました。千年以上の歴史を誇る美濃和紙や、提灯、和傘づくりなどがそうです。長良川鵜飼も、8世紀はじめの文献に記述が残されているそうですから、もう1300年以上の歴史を数えることになります。
そんな岐阜の伝統文化を背景に、和紙と竹でつくった巨大なあかりを鵜飼観覧船に載せて、冬至の夜の長良川に流し、過ぎゆく1年に思いをはせる――それが「こよみのよぶね」です。
はじまりは2006年
「こよみのよぶね」は、2006年、岐阜市出身のアーティスト日比野克彦さんの発案・呼びかけではじまりました。2006年秋に岐阜県美術館で開かれた展覧会「HIBINO DNA AND… 日比野克彦応答せよ!!」と合わせ、「アートで人々の心をつなぎ、岐阜の持つ魅力(DNA)を再発見する」プロジェクトが市内各所で行われ、その中心として実施されたのが第1回です。美術館のエントランスホールでは、来館者が紙を貼って長良川をつくるインスタレーションが会期中ずっと続いていました。
第3回(2008年)からは市民・企業・行政の連携を強め、柳ヶ瀬に開かれた「こよみのよぶね造船所」で、市民ボランティアが土日に行灯をつくる体制になりました。
「長良川って、僕ら岐阜で育った人間にとってはアイデンティティの一部というか、心の拠りどころになってる気がする。夏の長良川には全国的にも有名な鵜飼がある。でも冬って何もなかったんだよね。だったら冬の長良川にみんなが集まる何かをみんなでつくろうと」
日比野克彦
時をあらわす1から12の数字と干支の行灯は、毎年、さまざまな地域から名乗りを上げた市民グループがそれぞれ担当。思い思いのデザインを描くところからはじまり、数か月をかけて制作しています。地域の子どもたち、学校、団体、そして多くの市民の手仕事が灯りとなって、冬の川に浮かびます。

昨年(2025年)の当日の流れ
2025年開催時の情報です。年によって時刻や場所は変わります。2026年の当日の流れ・観覧のご案内は、決まり次第今年の案内でお知らせします。
- 16:00–17:30冬至迎え鵜飼観覧船のりば
刻々と変わる黄昏の空の色を背景に、いろいろな色の和紙で彩られた1から12の数字と今年の干支をかたどった行灯に明かりが灯ります。
- 17:30出船鵜飼観覧船のりば
川原に設営された行灯たちが見守るなか、1月〜12月の行灯が干支船に先導され長良川へと出船していきます。
- 〜19:00時の流れ長良川右岸プロムナード
干支船と1月〜12月船が、上流〜下流と回遊します。
- 19:00–20:00こよみっけ!!渡し長良川右岸プロムナード
巫女によるこよみっけ!!渡しの儀式が行われます。
- 20:30–21:30楽日初日鵜飼観覧船のりば付近
数字行灯の骨組みの竹から和紙をはがして解体し、翌年の左義長に備えてこの日は締めとします。
観覧のヒント(2025年開催時)
- 冬至の日の長良川岸はとても寒いので、暖かい格好でお越しください。
- ご来場は公共交通機関をご利用ください。お車の場合は周辺の有料駐車場へ(無料駐車場はありません)。
- 見どころは「すぎ山」前。こよみっけ渡しの儀式や日比野さんによる行灯の解説を聞きながら、みんなで一年を振り返りましょう。
「こよみっけ!!」
1月って、何してたっけ? 2月は? 3月は……。一年をひと月ごとに振り返り、その月の想いや、言い残したこと、やり残したことを小さな短冊「こよみっけ」に書いてもらう行事です。
集めた札は冬至の当日、1月舟から順に「すぎ山」前に接岸した舟へ、日比野克彦さんから手渡されます。これが「こよみっけ渡しの儀式」。札を載せた舟は川を流れ、みんなの一年の想いを運びます。そして翌年の左義長で、集まった札と行灯の和紙を燃やし、想いは天に帰ります。
出典:「こよみっけ!!」のご案内(こよみのよぶね2007実行委員会)。2007年の記録にPDFがあります。

総合プロデューサー 日比野克彦
1958年岐阜市生まれ。東京藝術大学大学院修了。大学在学中にダンボール作品で注目を浴び、国内外で個展・グループ展を多数開催する。近年は各地で一般参加者とその地域の特性を生かしたワークショップを数多く実施している。東京藝術大学 学長。岐阜県美術館 館長。
とうほくのこよみのよぶね
2011年、東日本大震災の年。この年のこよみのよぶねのリーダーを務めた庭師の親方・古川乾提さんは、津波がさかのぼった川にこよみのよぶねを運ぶ決心をしました。被災地の人たち、漁師の人たち、ボランティアの人たち――さまざまな手が集まり、こよみのよぶねは東北の水辺に浮かび、「鎮魂のあかり」「慰霊の灯」と呼ばれました。
こよみのよぶね実行委員会は毎年3月11日の慰霊祭の日に「とうほくのこよみのよぶね」をつくり、運び、水辺に鎮魂のあかりとして浮かべています。
出典:2016年特設サイト「親方のコメント」(2016年1月20日)












